不動産特定共同事業

小規模不動産特定共同事業の注意点・デメリット

小規模不動産特定共同事業を検討する場合の注意点

小規模不動産特定共同事業は、従来の許可事業に比べて、事業者の資本金要件などが緩和され、小規模の事業者が活用しやすくなっているように見えますが、メリットばかりではないため注意が必要です。

業務体制に対する要求レベルが高い

小規模不動産特定共同事業を行うためには、法定の資格等を有する「業務管理者」を選任するひつようがありますが、それだけでは不十分で、投資家の募集活動などを行う営業部門の他に、管理部門(法令その他の規則の遵守状況を管理し、その遵守を指導する部門)及びその責任者を設置・選任し、コンプライアンス遵守が適切に図られるような体制を整備する必要があります。
コンプライアンス遵守が適切に図られるには、組織において内部牽制機能が働く必要があるため、営業部門と管理部門は別々の責任者・担当者が選任される必要があり、両者を兼務することは許されません。
また、小規模不動産特定共同事業を行うためには、事業者は宅地建物取引業者であることが要件となっておりますが、宅地建物取引業における専任の宅地建物取引士には専任制が求められていることから、監督官庁によっては専任の取引士と小規模不動産特定共同事業の業務管理者の兼務を認めていないところもあります。
「小規模不動産特定共同事業」というネーミングからは、少ない人員で手軽に事業を行うことができそうな印象を受けますが、上記の要件を満たす組織体制は専門知識・経験を有する相当数の人員を要しますので、とても「小規模」とはいえないのが実情です。

登録手続も許可取得と同様に大変

行政処分の位置づけの中で、「登録」は「許可」よりも審査が緩いと通常は言われていますが、小規模不動産特定共同事業の登録に関しては、不動産特定共同事業の許可要件よりも登録要件が緩和されてはいるものの、そもそもの制度趣旨が「投資家保護」であることから、登録の審査は許可の審査に負けず劣らず厳しいものとなっており、登録までの日数も数ヶ月に及びます。

事業総額が小さいにもかかわらずたくさんの投資家を集める必要がある

小規模不動産特定共同事業という名前からは、少数の投資家から出資を集めて小さく事業を行うような印象を受けるかもしれません。
小規模不動産特定共同事業においては、事業参加者が行う出資の価額及び当該出資の合計額が以下の金額を超えないことが法律で定められています。

一 事業参加者が行う出資の価額 百万円(当該事業参加者が特例投資家である場合にあっては、一億円)
二 事業参加者が行う出資の合計額 一億円

要するに、一般投資家から出資を集める場合、事業総額が1億円が上限で、ひとりの投資家から出資していただく金額の上限が100万円ですので、事業総額の上限額1億円を集めるためには、投資家を少なくとも100人集める必要があります(1人100万円 × 100人 = 1億円)。 100人の投資家から出資をしていただくのは、少数の投資家からそれぞれ多額の出資をしていただくのと比べると、想像している以上に大変です。

クラウドファンディングサイトを立ち上げて募集することも可能ですが、そのためには許可取得と同様の電子取引業務についての登録を受ける必要があり、また、システム構築・維持コストも同様に掛かりますので、募集できる事業総額の上限を考えると、コストに見合った効果があるのか慎重に検討する必要があります。

事業がうまくいった際の事業総額の天井の存在

100人の投資家を集めるのは大変ですが、順調に出資を希望する投資家が集まっても、上記の通り一事業者に許されている事業総額は1億円と設定されてしまっているため(特例事業者(SPC)を利用した第二種小規模不動産特定共同事業であれば、特例事業者毎に上限1億円で、総額10億円まで複数の特例事業者を利用して出資を集めることができます)、投資家を集めることができる信用力や営業力のある事業者はこの天井にぶつかってしまうことになります。


小規模不動産特定共同事業を検討されている事業者の中には、「小規模不動産特定共同事業でうまくいったら、通常の不動産特定共同事業の許可を取得する」とおっしゃる事業者もいらっしゃいますが、上記の通り試しに行うにはかなりハードルの高い事業であり、許可事業への変更にはさらに追加で時間がかかることから、本気でこの事業において早期に成功させる意気込みのある事業者さまは、最初から許可事業の方を目指されることをおすすめいたします。


小規模不動産特定共同事業とは
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小規模不動産特定共同事業とは 事業規模等に一定の制限を加えることにより、従来の不動産特定共同事業の許可要件に比して緩和された条件で登録を受けることができるのが、小規模不動産特定共同事業です。 小規模不 ...

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